水稲の高温登熟障害対策として,湛水をせずに土壌を常に湿潤状態に保つ水管理(飽水管理)が推奨される場合があるが,飽水管理による玄米品質への影響を報告した事例はほとんどない。そこで,本報では,湛水区と飽水区を用いて栽培試験を行い,地温などの土壌環境,玄米品質の違いについて考察した。その結果,飽水管理では最高地温は0.5℃高く,最低地温は0.5℃低い結果となった。飽水管理が品質に及ぼす影響は,遅植えなどによる高温回避の効果よりは小さいものの,同じ気象条件下では整粒率の向上,基部未熟粒・乳白粒などが減少する傾向にあり,用水供給側に関係なく適用できる節水栽培であることから,同法は高温障害対策として有効な水管理の一つと考えられた。