都市部は土地利用の変化が著しく,宅地化や道路の敷設に伴う水路の部分的な改修や路線変更が行われる頻度が高い。さらに,農業水利施設に対し,親水機能など農業生産以外の多面的機能が求められる場合も多い。都市部の農業水路を対象に機能診断を行った結果,土地区画整理事業に伴う水路の路線変更が背割分水工の分水比を変化させ,河川取水量が減少した際に下流で水不足が生じる原因となった可能性が明らかになった。本事例から,部分改修の際には,水路システム全体の水理学的バランスを考慮した設計を行うことの重要性が示された。また,水利組織が縮小している農業用水に対しては,部分改修の際に技術的支援を行うことができる体制づくりが必要と考えられる。