農業用ポンプ設備の機能診断は,これまで主として,日常・定期点検記録をもとに目視・触診・聴診などの外観調査が実施されてきた。しかし,このような外観調査では内部の劣化状況を把握することができないことから,近年,潤滑油による機能診断(以下,「潤滑診断」という)の事例が報告されている。潤滑診断は,ポンプ設備の軸受けや減速機,エンジンなどから潤滑油やグリースを採取し,油中に含まれる金属摩耗粒子の量や形態などの情報を用いて,ポンプ設備を分解せずに軸受けなどの摩耗状態を把握する手法である。本報では,これまでに潤滑診断を実施した事例に基づき適用時の留意点を示し,農業用ポンプ設備への適用に当たっての課題と研究の取組みについて報告する。