既設の農業用水路網を利用して粘性土を水田へ客入する流水客土事業が,富山県の5つの扇状地に展開する水田13,648haで1951~77年に実施された。そのうち最後に行われた砺波地区(庄川)は客土面積5,707haと国内最大規模で,灌漑地の勾配も平均1/300と緩く,流下距離も24kmと長いので,採土地には大規模で高レベルの微粒化プラントが設けられた。本論では砺波地区の事例を中心に,採土地での機械掘削と射水による泥水の造成,長距離送泥実験に基づく微粒化プラントの設計,農業用水路を利用した送泥の浮流理論による検証,客入田における流量と濃度による客土量の算定など,客土事業の流れに沿って興味深い技術的観点について解説する。併せて主に北海道で行われたポンプ送泥客土についても紹介する。