本報では,平面2次元水理モデルと生息場適性モデルを統合した生態水理モデルを援用し,流水環境の多様化に効果があるバーブ工および置石を考慮した自然再生シナリオの効果を定量的に評価した。シナリオ分析の結果から,水利機能を重視したコンクリート3面張りの水路において,比較的容易に施工可能な自然再生技術を適用することによって多様な生息環境を創出し,水路が本来有する生態学的機能を回復できる可能性が示唆された。今後の課題として,種々の物理環境を有する農業水路において,生息場の質と空間的多様性の評価事例を集積し,相互に比較・検討することにより,農業水路の整備設計における定量的な基準を策定することなどが挙げられる。