マツカサガイは環境省レッドリストにおいて準絶滅危惧に選定されており,タナゴ類の産卵母貝としての機能を有していることから保全が急がれている。同種の安定的な生息の阻害要因の一つとして,流れによる移送が考えられるため,本研究では,マツカサガイが移送される流速を把握するために,同種の生息場所の底質を水路床に敷いた水理模型を用いて実験を行った。実験では,流速を6段階発生させ,各流速で移送された個体数をもとに移送率(=移送個体数/実験個体数×100)を算出した。その結果,移送される個体が出現し始める限界流速(移送率10%)は,約31 cm/sであり,大半の個体が移送される流速(移送率90%)は,約50 cm/sであった。