国営農業用水再編対策事業「九頭竜川下流地区」は,老朽化した開水路の改修と合わせて,これまで質・量ともに不安定な水源に依存していた周辺地区に対し水源を確保するため,幹線用水路をパイプライン化し,平成28年に全面供用開始に至った。事業実施に当たり,これまでの水利慣行を理解し,今後の地域農業の変化に対応しうる利便性の高い新たな水利システムを構築するため,官・学連携スキームを取り入れ,課題に取り組んできた。本報は,本地区の千年もの長きにわたる水利の歴史的経緯とともに,パイプラインシステム,調圧水槽,水管理システムの検討経緯を中心に紹介し,新たに構築された水利システムの俯瞰を試みるものである。