農業農村整備事業における環境配慮は,地域住民にとって自分たちのためのものとの認識が薄く,維持管理への負担感や不公平感がある。しかし,石川県での事例調査から,生き物調査に繰り返し参加した人に,維持管理作業への参加意欲が高まる可能性や,地域の生物や自然への興味や誇りが喚起され,それを保全し地域の活性化や子供の環境教育に生かしたいという意識変化が生じる可能性が示唆された。このような変化は,子供時代に生物を捕まえて遊んだ楽しさを思い出したことによりもたらされたと推察された。生き物調査を通して生物の持つ共感価値を再認識することで,維持管理の負担感や不公平感が軽減されたと思われる事例として報告する。