1970年代初頭,わが国ではアルカリシリカ骨材反応(ASR)によるコンクリートの問題はまれとされていた。しかし,1980年代中期にはこの問題がクローズアップされ,1989年にはJIS規格変更により,以後ASR抑制対策が実施された。2013年11月,完成後約30年でこの規制前に建設されたフィルダム洪水吐で擁壁の倒壊事故が発生した。当該施設は倒壊前にカナダ法による調査ではASRとの判定はなされていなかった。倒壊後,SEM-EDS試験,粗骨材から抽出した細骨材を用いた化学法,モルタルバー法による試験の結果,粗骨材に大きな膨張性が認められた。報文は,これらの一連の調査をとりまとめ,規制前のコンクリート構造物に対するASR評価対策の一助となればと考え報告する。