2017 年 85 巻 2 号 p. 143-148,a2
カンボジアでは,社会経済の復興から発展への移行に伴い,水資源利用の大宗を占める農業用水に加えて飲料水,工業用水,水力発電の需要が高まりつつあり,近年,新規と既存の水利用者間での調整や,上流と下流の灌漑システム間での水の公平な配分などによる流域単位での水生産性の向上が,農村地域での重要な課題となっている。本報では,カンボジアにおける流域水資源管理に関する政策的枠組みの構築状況,灌漑・水資源管理分野における日本の協力状況について概括し,特に2014年から実施しているJICA流域水資源利用プロジェクトについて,背景,計画概要,研修,観測網強化,流域情報整備,流域水収支分析,流域管理委員会の設立などの実施状況および課題と今後の展望について述べる。