2018 年 86 巻 12 号 p. 1111-1115,a1
本研究は,田の水田利用と畑的利用の差異に着目しながら,人口減少社会の本格化を想定した場合の水田フル活用の展望を明らかにした。日本の農業・農村の多面的機能の評価では,水稲作に対する評価が大きいほか,水田フル活用のための技術普及が食料安全保障に果たす役割が大きい。しかし,人口減少下では,稲作割合の減少が無視できなくなるほか,食料安全保障という論拠の希薄化,農業・農村の多面的機能の発揮を支える国民の税負担の増加などが展望されるため,農業・農村の多面的機能を,田の利用形態や人口減少を踏まえて再評価して,将来に向けてより確固とした政策的論拠に基づいた水田フル活用を推進していく必要性を指摘した。