戦後の水資源開発の手本ともいえる十津川・紀の川総合開発事業は,紀伊水道に流れ込む紀の川の水を奈良県大和平野へ導水する一方,熊野灘へ流れ込む十津川の水を紀の川へ流し和歌山県紀伊平野も広く潤すという2つの流域変更を伴う歴史的な大事業であった。この事業により両平野の水不足が解消し,近畿でも有数な穀倉地帯が形成された。本報では,前歴事業により建設された農業水利施設を改修する二期事業について,その実施に至る経緯および事業内容について整理するとともに,地域に対する国営事業の今日的評価を行い,事業の実施によりさらなる展開が期待される地域農業の将来展望について水利用の観点から考察するものである。