ソ連時代の1960~80年代に中央アジアでは大規模な農地・水資源開発が行われた。特に,アラル海に流入するアムダリア川,シルダリア川下流域やイリ川下流域では,水稲−畑作物の輪作が行われ河川から大量に取水された。カザフスタンの大規模灌漑地区はソ連崩壊・カザフスタン独立後に耕作面積が大きく減少したが,その後回復している。本報では,社会体制の変化という想定外のショックに対する灌漑農業のレジリエンスについて当時の農地・水資源開発のコンセプトに基づいて議論する。また現在,両河川の上流国の水需要増加や国内での農業以外の水需要の増加に伴い,農業への水供給量が削減されつつある。そのショックに対するレジリエンス強化について議論する。