東日本大震災に伴う大津波のあとに,岩手県,宮城県,福島県の沿岸部には希少な植物種を含む湿生植物群落が再生した。筆者らは,農地・道路の復旧事業により消失する恐れのあった宮城県南三陸町の湿生植物群落の土壌シードバンクを耕作放棄地に移植する保全対策を行った。その結果,ミズアオイ,ミズオオバコ,シャジクモといった絶滅危惧種を再生させることができた。耕作放棄地を利用して一年生草本の生育場として維持していくためには,代かきという撹乱を継続することが必要であることが示唆された。今後,湿地環境として維持するための水管理も必要となる。これらを湿生植物の生育場として維持していくためには,代かきや水管理を行う担い手に対して,人的・財政的負担が必要である。