高千穂町下野地区で実証試験されたICT自動給水栓のうち,山腹用水路の受益水田に導入された4機を対象にサーバに記録された膨大な作動履歴から灌漑回数,灌漑時間,平均取水量などを分析した。その結果,用水路の上流側水田の1カ所で下流側に比べるとルーズな水管理になりがちなことが見てとれた。山腹用水路では幹線水路延長が長く上流優位となり,とくに多くの農家が作業を行う昼間に水管理を行おうとすると,必要な灌漑量の確保に要する時間の見通しが立ちにくいことが明らかとなった。こういう場面では,ICT自動給水栓を利用することにより,水管理に伴う心理的な負担の軽減に一役買うことができるであろうことを示すことができた。