かつて全山が牛の放牧地であった島根県三瓶山は, その野草地景観の美しさゆえ, 国立公園に指定された。しかし, その後の放牧衰退による植生遷移や植林等により, 現在では往時の美観が失われつつある。
当該地域における野草地の多目的機能を評価するとりかかりとして, 発行年時の異なる地形図を用い, 農村景域の変遷をGISにより解析した。地形および土壌の自然立地条件と関連づけて解析を行った結果, 三瓶山本体および周辺の中国山地においては, 野草地の衰退が顕著であった一方, すそ野を示す立地区分においては, 農用地開発が行われたにもかかわらず, 現在もなお野草地の維持されていることが明らかとなった。