欧米先進国で進んでいる水資源をめぐる議論は, 水価設定・水市場に代表される経済学主導の考え方であり, 効率が悪いという理由で, 灌漑用水が批判の矢面に立たされている。灌漑農業はアジアに集中しているため, アジアの現状を無視した議論は無意味なはずであるが, 現実にはアジア稲作の特徴についての配慮に乏しい市場万能主義が主体で, 水質保全対策も軽視されている。
第3回世界水フォーラムが2003年3月に日本で開催され, 今後水問題の議論も活発になると思われることから, 水価設定に関する議論を整理するとともに, アジアモンスーン地帯における水価設定の前提条件たるべき水管理組織の必要性について述べる。