2008 年 76 巻 2 号 p. 119-124,a2
第2次大戦後, 植民地支配から独立したアジア・アフリカの多くの国々は, 経済的自立を図るためその原点として農業開発に力を注ぎ, 政府主導の大規模灌漑開発を行ってきた。現在では, 持続性の観点等から参加型アプローチに基づく小規模灌漑開発が脚光を浴びている。そこで, これからの小規模灌漑開発展開のあり方を考えるため, 事例として世界銀行による灌漑事業の変遷・動向および「大規模」と「小規模」の特性の違いを整理した。1973年の世界銀行の援助方向転換は小規模灌漑誕生の契機となったが, 全灌漑貸出し案件数に占める小規模の割合は8%と少なく, 小規模灌漑が灌漑開発の主流とは必ずしもなっていないことがわかった。