2024 年 35 巻 p. 9-23
海洋プラスチック問題等に端を発し,2010 年代半ばからプラスチックの資源循環は新たな局面を迎え各国・地域で対応が進められている。本稿では同じく非 EU の先進国であるイギリスと日本の対応を EPR (拡大生産者責任) の視点から比較し,差異の実態とその意味を考察した。研究方法としては,両国の新政策による変化を,物理的,金銭的,情報的の 3 つの側面に分類し,さらにそれぞれを収集,循環利用・適正処理,製品設計,制度構築の 4 つのステージごとに分析した。その結果,両者には明瞭な差が認められた。イギリスが物理的,金銭的,情報的各側面での政策手段の組み合わせで生産者責任の強化を図っているのに対し,日本では金銭的な手法は採用されず,自主的取組に重点が置かれており,生産物連鎖中の各主体 (生産,流通・販売,利用,リサイクル) が連携して各々実行すべき役割を果たすことが目指されている。今後,政策効果の実証と両者の差の原因の考察が必要である。