2023 年 105 巻 8 号 p. 11-20
本研究の目的は,「比の第三用法」の数量関係を捉える上での困難性の具体を明らかにした上で,その困難性を乗り越えるための有効な手立てを探ることである.「第三用法」の比較量が先出する問題(ABr型)において,「順序先行型」の児童の2 つの困難性に着目し,授業実践の分析,考察を行った.困難性を乗り越える手立て「数直線に数を位置付ける過程の可視化」として,以下の2 点を提案したい.困難性Ⅰ「先出した数直線上の比較量を1と見てしまう」を乗り越えるには,「第一用法,第二用法の過程と第三用法の比較量を1 と見た過程を比較し,誤答となる理由を問うこと」が有効である.困難性Ⅱ「比較量にあたる割合を捉えることができず,念頭にある1 と見た未知数を数直線に位置付けられない」を乗り越えるには,「先に位置付けられた比較量の下に基準量の1と比べる数がない状態を可視化し,比較量にあたる割合と基準量の1を比べる必要性をもたせること」が有効である.今後は,第一,二用法を含めた単元づくりの在り方や,「基準量先行型」に焦点を当てた研究を進めていきたい.