日本看護研究学会雑誌
Online ISSN : 2189-6100
Print ISSN : 2188-3599
ISSN-L : 2188-3599
中高年期における発達的危機および状況的危機が主観的幸福感に及ぼす影響
桂 敏樹野尻 雅美中野 正孝
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 19 巻 4 号 p. 4_9-4_18

詳細
抄録

  高齢者の生活の質を高める条件を明らかにするために中高年住民を対象に人生で起こる発達的危機や状況的危機が主観的幸福感に及ぼす影響力を比較検討した。 多変量解析の結果,以下のことが明らかになった。
1. 主観的幸福感と有意な関連が認められたのは個人的な成功,家の改築等,帰省,配偶者の死,怪我・病気で,いずれも状況的危機であった。
  主観的幸福感を高める危機は帰省,個人的な成功,夫婦別居であった。 一方,主観的幸福感を低める危機は配偶者の死,子供の非行,離婚,解雇,会社倒産・合併・再編,妊娠,夫婦喧嘩,親族とのトラブルであった。
2. 性別にみると男性で主観的幸福感と有意な関連が認められたのは帰省,個人的な成功,配偶者の死,怪我・病気,家の改築等で,いずれも状況的危機であった。
  主観的幸福感を高める危機は帰省,個人的な成功,昇格等,退職で,主観的幸福感を低める危機は配偶者の死,子供の非行,解雇,転職,離婚であった。
  一方,女性で主観的幸福感と有意な関連が認められたのは個人的な成功,退職,転職,家の改築等,配偶者の死で退職を除きいずれも状況的危機であった。
  主観的幸福感を高める危機は個人的な成功,夫婦別居,転職で,主観的幸福感を低める危機は離婚,退職,配偶者の死,子供の非行,性的障害,親族とのトラブル,会社倒産等,夫婦喧嘩の変化であった。
  今回の結果をみると状況的危機は主観的幸福感にネガティブな影響だけでなくポジティブな影響を持つものもあることが明らかになった。

著者関連情報
© 1996 一般社団法人 日本看護研究学会
次の記事
feedback
Top