日本看護研究学会雑誌
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精神分裂病患者の歩数と精神症状変化の関係
久米 和興森 文子
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2001 年 24 巻 1 号 p. 1_89-1_98

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抄録

 前駆症状の定義は曖昧で,把握する事が難しい。 そのため早期警戒症状という実践的概念がでてきた。 これは,分裂病患者の再発前の差し迫った状態を含む。 しかし,前駆症状と同様に早期警戒症状を確実に捉えるには困難がある。 それは症状の測定に段階尺度を用いる必要があるためである。 そのため評価手段の粗さを補うために,量的かつ連続的な測定方法が求められている。
 本研究では,精神症状の変化に関係すると思われる歩数に着目した。 入院中の分裂病患者8人に万歩計を装着し,約1年間歩数を測定した。 そして週毎に平均歩数を求めた。 同時に精神症状の重症度を測定した。  その結果,5人が歩数の変動と精神症状の変動との間に有意な関係を示した。 4週間前から1週間前までの歩数と現在の精神症状との間にも有意な関係がみられた。 そのため歩数を測定することで,精神症状の変動を予測される患者の存在が示唆された。
 この方法は分裂病の病状悪化に先立つ早期介入を判断する看護技術の一つになると考えられた。

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© 2001 一般社団法人 日本看護研究学会
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