2005 年 28 巻 1 号 p. 1_45-1_52
殿部筋肉内注射実施時の安全性について検討するため,代表的な殿部筋肉内注射部位である「四分三分法の点」および「クラークの点」において,実習用遺体18体33側の皮脂厚および筋の構造,各点と上殿神経との解剖学的位置関係について調べた。また,健康な成人女性32名(20~55歳)64側の殿部について皮脂厚を計測した。「四分三分法の点」では「クラークの点」よりも皮脂厚が有意に厚く(p<0.001),そして12側に皮脂の直下に大殿筋が分布していた。中殿筋の厚みは「クラークの点」(2.1±0.8㎝)の方が「四分三分法の点」(1.7±0.7㎝)より厚かった(p<0.01)。また「四分三分法の点」では,注射針を直角に小殿筋表層まで刺入した時,上殿神経への刺入が10側(30.3%)あった。このことから,「クラークの点」の方が,「四分三分法の点」よりも中殿筋に安全に注射針を刺入できると考えられた。