抄録
本研究の目的は,脊髄損傷患者が急性期にどのような体験をしているのかを明らかにすることとした。研究参加者は,一回復期リハビリテーション病院に入院あるいは通院している脊髄損傷患者6名である。方法は,半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した。その結果,急性期において,脊髄損傷患者には,損傷による激しい身体の痛みが生じていた。また,他者のペースに依存しなければ生活動作ができないつらさを抱え,家族内における自分の役割を模索していた。医療者に対して感謝の気持ちや信頼感をもつ一方で,理解してくれないつらさや失望など相反する思いをもっていた。そして,自分が生きていることを喜んでくれた家族や友達,残存能力を認めてくれる看護師の存在が生きる希望につながっていた。これらから,身体の痛みや他者に依存しなければならないつらさを理解し,脊髄損傷患者が生きる意欲をもてるような関わりについての看護介入の視点が示唆された。