抄録
本研究では包括型地域生活支援プログラム(ACT)を受けた精神疾患を有する本人の家族を対象に,半構造化面接法によるインタビューを行った。質的記述的研究デザインを用いた縦続比較的コード化とカテゴリー化を行い,家族の思いの全体像を示した。結果,[寄り添う人々がいることを感じる]ことにより[ありのままでいよう]と変化する過程が明らかにされた。その具体的な変化は,[忘れられない苦しみ]や[老いていくことの不安]がありながらも,家族自身に[寄り添う人々がいることを感じる]ことで,[誰にも言わずに耐えてきた本人の悲しみを感じる]共感的な思いが生じ,さらに[こころの病気だからと理解していく],[こころの病気に諦めをつけていく]ことで,[生活のための薬を続けてほしい]という思いや[こころの病気の人と在る]という思いの過程であった。家族支援として,家族の思いを肯定的に変化させる関係形成への示唆が得られた。