2018 年 41 巻 1 号 p. 1_59-1_72
統合失調症と向き合う家族の関係性のプロセスを明らかにするため,家族システム理論を活用し,患者の母親3名の語りを家族サブシステムの勢力構造に焦点を当てて質的に分析した。家族の状況を表す4つの局面と勢力構造を示す26の大カテゴリーが抽出された。『家族が患者の発病に気づき受診させる局面』では,祖母を含む家族員に対立と分裂が生じた。『家族が患者の病状に翻弄される局面』では,家族は外部との接点を閉ざし,患者に翻弄されて家族機能に支障をきたした。『家族が苦悩しながら患者との向き合い方を模索する局面』では,家族が夫婦の同盟を契機に内部のつながりを取り戻し,外部と交流した。『家族が患者との在宅生活を再編する局面』では,同胞を含め調和的な関係となった。家族間の葛藤を和らげ調和を導くために,家族員個々への疾患教育や,夫婦に働きかけることから親子関係を調整する介入,脆弱な立場にある同胞の支援の必要性に示唆を得た。