日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
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特別講演2
日本人特異的肺障害は存在するか - 遺伝学的考察と遺伝子検索
萩原 弘一
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2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 24

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抄録

 近年,日本人肺の脆弱性が指摘されている.⑴薬剤性肺障害が他国(西洋や他のアジア人)より高頻度で見られ,高率に致死的な経過をたどること,⑵肺線維症を有する患者で他国より高頻度に急性増悪が起こり,高い致死率を示すと推定されることが典型例である.とくに,gefi tinibの肺障害は,疫学データがしっかりしており,民族差が明確に示されている.上記2つの病態以外にも,何らかのきっかけでびまん性肺胞障害を特徴とする肺障害が起こり,患者が重篤な状態に陥る,または死亡する病態が医療のさまざまな分野で見られるが,それらの中にも日本人で高率に発症していると推定されるものがある. 肺線維症合併患者への抗癌剤投与で見られる肺障害,照射野以外の肺に広範に広がる放射線肺臓炎,肺線維症合併患者の術後にみられる急性増悪,皮膚筋炎患者にみられる致死性急速進行性間質性肺炎などである. 薬剤性肺障害や特発性肺線維症急性増悪に関与する遺伝因子は多数あると想定されるが,その中でも特に強く関与する,すなわち,遺伝的効果の高い遺伝因子を1つ想定すると民族差を説明しやすい.この場合,遺伝因子の民族内頻度の差が,そのまま疾患頻度の民族差として現れる.日本人特異的肺障害は民族特異的な遺伝因子により引き起こされるのではないか.薬剤性肺障害や特発性肺線維症急性増悪に関与する遺伝因子は多数あると想定されるが,その中でも特に強く関与する,すなわち,遺伝的効果の高い遺伝因子を1つ想定すると民族差を説明しやすい.この場合,遺伝因子の民族内頻度の差が,そのまま疾患頻度の民族差として現れる. この作業仮説に基づき,全国30余りの医療機関の協力を得て,薬剤性肺障害または特発性肺線維症急性増悪患者検体の収集を行った.エクソーム解析を98名(イレッサ肺障害+タルセバ肺障害36名,特発性肺線維症急性増悪45名,ザーコリ肺障害2名,ドセタキセル肺障害15名)に対して施行した.健常日本人のエクソームデータを対照として関連解析を行い,さらに疫学データへの一致確率を解析した.その結果,一つの遺伝子が候補として浮かび上がってきた. 本日は,この研究過程と,候補遺伝子の構造,機能と肺障害の関連の可能性,さらに特発性肺線維症自体への関連可能性に関して述べてみたい.

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© 2014 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
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