IgG4関連疾患は,21世紀に本邦から発信された新しい全身性疾患の概念である.2001年 Hamanoらが,自己免疫性膵炎において血清IgG4の上昇と膵組織へのIgG4陽性形質細胞の浸潤を 報告した.その後,Yamamotoらも,シェーグレン症候群の亜型とされていたミクリッツ病に おいても同様の所見を認めたことを報告し,IgG4に関連する全身性疾患の存在が明らかになった. 2011年には,厚生労働省科学研究補助金難治性疾患克服研究事業の研究班が主体となり,この 一群の疾患を「IgG4関連疾患(IgG4︲related disease)」と命名して,その疾患概念と包括診断 基準を提唱した.また同時期に開催されたボストン国際シンポジウムでも,我が国の研究者が 中心となって,そのコンセンサスの作成に貢献した. 本疾患は,高IgG4血症と共に,全身の諸臓器に腫大や結節,肥厚性病変を認め,組織所見では リンパ球,IgG4陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化が生じる疾患と定義されている.罹患臓器は, 涙腺,耳下腺,顎下腺,膵臓,後腹膜,腎臓,前立腺,リンパ節,などが判明しているが,まだ その病因は明らかでない. 一方,近年病因が解明されつつあるサルコイドーシスも全身性疾患であり,肉芽腫性病変は, 肺,眼,心臓,皮膚,神経・筋,肝・脾,腎,リンパ節など全身の臓器に及ぶことが知られている. またその臨床症状はきわめて多彩なことも報告されている. 本シンポジウムでは,眼,顎下腺,呼吸器,腎臓など,サルコイドーシスでも病変が生じやすい 臓器を中心に,IgG4関連疾患の臓器病変の臨床的特徴やその病理所見を各シンポジストに解説して 頂くように企画した. 臓器別に細分化された医療の進歩がめざましい中,サルコイドーシスやIgG4関連疾患などの 全身性疾患の診断や治療には,種々の困難が生じうる.本学会は異なる分野の専門家が集まる 貴重な会であることから,本シンポジウムにおいても,各方面の意見交換により,IgG4関連疾患の 理解がさらに深まることを期待したい.