日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
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シンポジウム2
眼領域:IgG4関連眼疾患の10年と今後の課題について
高比良 雅之
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2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 33

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抄録

 涙腺唾液腺の対称性腫脹をきたすMikulicz病において血清IgG4上昇を伴うことが初めて報 告されたのは2004年(Yamamotoら)である.従って本年は,IgG4関連眼疾患(IgG4︲related ophthalmic disease)の発見からちょうど10年目に当たる.これを機に,IgG4関連眼疾患に関する 従来の知見を整理し,また今後の課題について考えてみたい.我々が初めてIgG4関連涙腺炎の 症例を経験したのは2005年であり,ひき続いて経験したIgG4関連涙腺炎の症例群を報告した. 涙腺の病理では,ときに線維化を伴うが,いわゆる花筵様の形態はとらない,閉塞性静脈炎は みられないなどの特徴がある.その後も眼領域の報告は相次ぎ,病変は三叉神経周囲,外眼筋にも 及ぶ頻度が高く,さらには視神経周囲,血管周囲,眼窩脂肪,強膜,涙道など多岐にわたることが 判明した.しかし,なかには確かに病理の診断基準は満たすが,血清IgG4は正常でかつ他臓器 病変を併発しないような病変もあり,これらはIgG関連疾患の範疇とは考えにくい.2013年に実施 された日本のある多施設調査によれば,約1000例の眼窩リンパ増殖性疾患のおよそ20%がIgG4 関連眼疾患であった.IgG4関連眼疾患の発症年齢の中央値は62歳であり,20歳未満の発症はなく, また発症頻度の男女差は無かった.眼領域に生じるIgG4関連疾患病変では,特にMALTリンパ腫 との鑑別が重要である.先の統計からMALTリンパ腫は全体の40%以上を占め,その少なくとも 10%以上はIgG4染色陽性であると推察される.2012年には,全身の諸臓器にわたるIgG4関連疾患を 包括する診断基準が本邦から報告され,また初回の国際会議(ボストン)では疾患の名称や病理に 関するコンセンサスが得られた.しかしこれらを改めて検証すると,眼領域病変としては妥当で ない点もあり,このほど眼領域に特化した診断基準も検討された.IgG4関連疾患の治療の基本は ステロイド剤の全身投与であるが,長期投与や再発の問題がある.特に症状が眼領域に限られる ような症例では,ステロイドの局所投与や外科的切除などの局所治療など,眼科としての治療 指針も検討されるべきである.

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© 2014 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
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