日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
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教育講演
サルコイドーシスと肺高血圧
⻑井 苑子
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2015 年 35 巻 Suppl1 号 p. 27

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抄録

サルコイドーシスの臨床経過には幅があり、自然寛解から、慢性化、難治化まである。難治化は、肺、心臓、眼、神経系、皮膚など全身の臓器のそれぞれに認められる。サルコイドーシス全体の中では頻度としては一割以下であるが、機能障害が重度で、治療薬も不十分であるために、特定疾患としての認識が十分に必要な疾患である。サルコイドーシスの予後不良因子として、これまであまり認識されてこなかった病態に肺高血圧がある。肺高血圧は、背景の疾患、病態により 5 つの分類がされているが、サルコイドーシスに併存する肺高血圧は 5 群に分類され、この群にはまれではあるが種々の病態を背景とする疾患が含まれている。サルコイドーシスにみられる肺高血圧は、肺の線維化による過程でおこるほか、リンパ節による血管の圧排、血管内の肉芽腫病変がらみでおこってくる場合、左心系の病変や肺静脈病変(PVOD など)による場合、PAH と類似の病態など多様な病態が可能性としてあげられる。肺高血圧の診断と、そでが起こる病態の鑑別が、重要なポイントとなる。PAH の標的治療として開発された肺血管拡張薬を安易に投与すると、病態によっては、肺のうっ血機転を増加して悪化することもあるためである。肺高血圧の診断には右心カテーテルは必須とされているが、実際の臨床では、どこまで心エコーが活用されて、加えて、どのような情報を総合的に用いて、診断してくかについても、中央診療所でのスクリーニングを経験なども含めて紹介してみたい。サルコイドーシスにみられる肺高血圧の診断と治療管理については、確立したガイドラインがあるわけではなく、症例の蓄積と詳細な検討に期待する必要がある。そのためにも、サルコイドーシスに併存する肺高血圧を実臨床の場でも意識して鑑別の遡上にあげておくことが必要である。本講演では、実際の症例の紹介や文献紹介を織り込みながら、サルコイドーシスに併存する肺高血圧の多様性と問題点を明らかにできればと考えている。

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© 2015 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
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