日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
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シンポジウム2
サルコイドーシスと悪性腫瘍
サルコイドーシスとその周辺疾患との関わり
谷本 安片岡 幹男谷口 暁彦宮原 信明森 由弘谷本 光音
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2015 年 35 巻 Suppl1 号 p. 36

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抄録

サルコイドーシスと悪性腫瘍の関連については、1974 年に Brincker らが指摘して以来、多くの報告がなされたが、いまだ結論を得るにいたっていない。サルコイドーシスと悪性腫瘍の合併には以下の 3 つの場合が考えられる。まず第 1 にサルコイドーシスに悪性腫瘍が新規発症する場合、第 2 に悪性腫瘍患者にサルコイドーシスが発症する場合、第 3 に両者が同時に発症する場合がある。その他、悪性腫瘍患者に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫がサルコイドーシスとしての全身症状や徴候なしに認められる場合、サルコイド反応と呼ばれ診断には注意を要するが、鑑別困難な場合も多い。本邦におけるサルコイドーシス患者の合併症については、1991 年の第 8 回サルコイドーシス全国実態調査をもとにした立花の報告があり、それによると悪性腫瘍の合併例が最も多いとされ、肺癌、胃癌、乳癌、大腸癌などの固形癌や悪性リンパ腫、白血病などの血液悪性腫瘍などがある。また、本邦におけるサルコイドーシスと悪性腫瘍の関連についての最も大規模な調査研究は山口らの 1984 年の全国実態調査である。3 年間の経過追跡が行われた 1,411 例を対象に 3 年間で悪性腫瘍により死亡したのは 6 例で、肺癌 3 例、子宮癌 2 例、白血病 1 例であった。このうち、肺癌の標準化死亡率が有意に高率であったと報告されている。サルコイドーシスと悪性腫瘍の関連をみるため、サルコイドーシスと診断され、岡山大学病院外来で 6 カ月以上経過を観察している 486 例(男性 212 例、女性 274 例)の解析を行った。サルコイドーシス発症年齢は平均 46 歳、平均追跡年数は 11.1 年であり、486 例の観察年数は 5,392 人年であった。26 例(男性12 例、女性 14 例)に 15 種類、計 34 個の悪性腫瘍の発生が認められた。種類として多かったのは、肺癌 8 例、胃癌 3 例、大腸癌 3 例、皮膚癌 3 例、子宮癌 3 例などであった。5 例は二重癌、1 例は三重癌であった。悪性腫瘍を発生したサルコイドーシスの発症年齢は 53 歳と対照群の 45 歳に比して有意に高齢であり、悪性腫瘍発症時の平均年齢は 67 歳であった。観察人年法による標準化罹患比は、悪性腫瘍全体では 0.8 倍と上昇はみられなかったが、喉頭癌、皮膚癌では各々8.3 倍、4.7 倍と有意に高値であった。肺癌については 8 例と症例数としては最も多かったが、標準化罹患比は 1.6 倍であり、有意差は認められなかった。サルコイドーシスを診療していく上で、いくつかの悪性腫瘍はサルコイドーシスと関連している可能性があり、慎重な対応が必要である。

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© 2015 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
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