日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
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シンポジウム3
画像診断
各種検査法の有用性と問題点
酒井 文和
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2015 年 35 巻 Suppl1 号 p. 42

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抄録

画像所見が、診断ないし鑑別診断で有用な臓器は、全身のリンパ節病変、中枢神経系病変、胸郭内病変、心臓病変、腹部臓器、筋肉などである。サルコイドージスの画像所見は、病理学的な特徴と各臓器リンパ装置に分布などの組織構築の相違により、種々の画像診断所見を示すことになる。サルコイドージスの病変は、0.2mm までの非乾酪性肉芽腫からなる結節病変やこれに続く線維化病変である。1リンパ節病変;リンパ節腫大は、頸部や胸部、腹部などでみられるが、胸郭内リンパ節の腫大が最も高頻度にみられる。病変の周辺における浸出病変に乏しい病理組織所見を反映して癒合傾向に乏しい多発リンパ節腫大を示す。頻度は低いがリンパ節に種々のパターンの石灰化を示しうる。2肺病変;肺のリンパ装置は、気管支血管束沿いの広義間質に豊富に存在しているので、肺実質病変は、血管の輪郭に付着する小粒状陰影としてみられることが多い。小葉中心性ではなく、静脈路や小葉間隔壁、胸膜沿いにも病変がみられるのが、気道散布病変との鑑別点である。小粒状陰影が集簇すると塊状陰影を呈し塊状陰影の周囲には気管支血管束沿いの小粒状陰影が付着した形態をとり、galaxy sign と呼ばれサルコイドージスやリンパ増殖性疾患に特徴的所見である。サルコイドージスに伴う肺の線維化は、両側上葉外側より優位に気管支血管束に沿って起きることが多いが、様々な非典型的パターンを示す。3心筋病変;近年の MRI の進歩により、心臓サルコイドージスの診断に対する MRI の有用性が確立しつつある。心臓のリンパ管は、心内膜下と心室の外面に多く分布し、ことに心室筋の外面に豊富なリンパ管網を形成している。これらの病変の分布は心筋サルコイドージス病変の好発部位に一致する。心筋サルコイドージスの線維化巣が、反転回復法による造影 MRI の遅延造影相での造影効果を示す領域として描出される。4脳神経領域;脳神経領域においては、サルコイド結節は造影効果を示す小結節陰影が、実質内(intraaxial)あるいは髄膜病変などの extraaxial lesion として認められる。時に腫瘍との鑑別が困難な例がある。その他に画像診断が役立ちうる臓器は、筋肉や骨病変などである。5FDGPET は、サルコイドージス病変に高度の集積を示すことから、サルコイドージス病変の診断に有用である。心筋病変 の診断においては、心筋は正常でグルコースをエネルギー源として利用しているために、心筋の生理的な FDG 集積を抑制する必要があり、検査前の絶食、検査前の食事内容(低炭水化物食、高脂肪食)ヘパリン前投与(血中遊離脂肪酸上昇による糖代謝抑制)などが必要である。このようにサルコイドーシスの画像診断においては、その病理組織学的特徴、対象臓器におけるリンパ装置の分布、各種検査法の原理に基づく特性などを理解しておく必要がある。

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© 2015 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
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