日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
シンポジウム 「エビデンスに基づく鍼通電療法の臨床の実際」
閉塞性動脈硬化症に対する鍼通電療法の実際
- 疾患の程度による鍼治療効果とその作用機序 -
安野 富美子坂井 友実
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2017 年 42 巻 2 号 p. 25-33

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抄録

 閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans, 以下ASO)は、四肢動脈に動脈硬化が進行し、狭 窄あるいは閉塞が生じ、その環流領域に循環障害を呈する疾患である。本症は超高齢社会の到来 と生活習慣の欧米化による食生活の問題や運動不足、ストレスの増加などから今後益々の増加が 予想されている。
 ASOの主症状は、冷感、間欠跛行で、重症化すると安静時痛、潰瘍や壊死も起こってくるが、 いずれも下肢動脈の循環障害に起因した症状である。
 本症に対する治療は重症度によって異なる。Fontaine分類のⅠ・Ⅱ度では、主として保存療法が  行われるが、効果がみられず、外科的処置が行われることもある。
 一方、鍼治療は末梢循環障害の改善に効果があるとされているが、器質的疾患である ASOに対 しても鍼治療の効果があるのか、またその適応範囲と作用機序の一端を明らかにするために行っ た我々の研究について紹介する。
 鍼治療の効果を検討した対象は、ASO患者21例(Fontaine分類Ⅰ度1例、Ⅱ度17例、Ⅲ度2例、 Ⅳ度1例)で、鍼治療は、低周波鍼通電療法を主とした。評価項目は、冷感、間欠跛行距離、ペ インスコア、ABPIとし、鍼治療開始前と17回目の鍼治療前の時点で評価した。また、鍼刺激前 後の生体反応として、下肢の皮膚温測定(サーモグラフィ装置による計測)と血漿CGRP値の測 定を行った。
 その結果、Fontaine分類のⅠ・Ⅱ度の症例では、冷感の改善、間欠跛行距離の延長、歩行時の疼 痛の軽減がみられた。Fontaine分類Ⅲ・Ⅳ度の症例では、症状の改善は得られなかった。ABPIは、 すべての症例で変化がみられなかった。鍼刺激による、時間経過に伴う下肢末梢の皮膚温は有意 な変化を示し、鍼刺激開始15分後から、抜鍼後15分後にかけて刺激前値に比し、有意な上昇を 示した。血漿CGRP値は、鍼刺激15分後に刺激前値に比し有意な増加がみられた。
 以上のことからASOに対する鍼治療はFontaine分類Ⅰ度・Ⅱ度に効果的であり、その機序とし て末梢血管を拡張させ、循環を改善させることを示した。このことからASOに対する鍼治療の適 応は、Fontaine分類Ⅰ度・Ⅱ度と考えられた

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© 2017 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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