日本ペインクリニック学会誌
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症例
特発性脳脊髄液減少症にX線透視下で自己血30 mlを硬膜外腔に注入した1症例
谷 真規子石川 慎一溝渕 知司西江 宏行佐藤 健治中塚 秀輝森田 潔
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2008 年 15 巻 1 号 p. 26-30

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抄録

特発性脳脊髄液減少症の保存的治療中に硬膜下血腫による意識障害を繰り返したので,X線透視下に硬膜外腔に30 mlの自己血を注入したところ,頭痛は消失し,硬膜下血腫が再発しなかった症例を経験したので報告する.51歳の男性で,起床後に起立性頭痛が突然起こり,増強したので入院した.頭痛に加え,嘔気と耳鳴りがあり,頭部MRIとCTで両側性の硬膜下水腫がみられた.特発性脳脊髄液減少症が強く疑われ,点滴と安静臥床による保存的治療を行ったが,硬膜下血腫が増大し,意識障害を繰り返した.硬膜下血腫除去が2回行われたが,起立性頭痛は消失しなかった.RI脳槽造影検査は早期膀胱集積を示したが,髄液漏出部位は特定できなかった.胸椎MRIおよびCT脊髄造影で,第2から第8胸椎レベルでの髄液漏出が強く疑われたので,第4,5胸椎間から12 ml,第6,7胸椎間より18 mlと計30 mlの自己血をX線透視下に硬膜外腔に注入した.硬膜外腔への自己血注入後に,頭痛は速やかに消失した.自己血注入に伴う明らかな合併症はなく,硬膜下血腫の再発はなく,退院となった.

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© 2008 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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