日本ペインクリニック学会誌
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症例
慢性膵炎の急性増悪による上腹部痛に柴胡桂枝湯が著効した1症例
鵜瀬 匡祐木本 文子中原 春奈別府 幸岐吉村 真紀深野 拓
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2009 年 16 巻 2 号 p. 165-168

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抄録

アルコール性慢性膵炎の急性増悪による上腹部痛が柴胡桂枝湯で消失し,画像所見も改善した症例を報告する.62歳の維持透析中の男性で,内科に入院中であった.視覚アナログスケールで60-80/100 mmの上腹部痛と背部痛があり,疼痛の治療のために麻酔科を紹介された.モルヒネの持続静脈内投与を開始し,疼痛は軽減し,2週間後にモルヒネを中止した.しかし,経口摂取を開始後に膵炎が再燃し,上腹部痛が再発した.モルヒネ,フェンタニルの持続静脈内投与,アトロピン,非ステロイド性抗炎症薬を併用したが,上腹部痛は軽減しなかったので,柴胡桂枝湯の内服を追加した.上腹部痛は10日後に消失し,オピオイドを中止した.腹部CTで遷延していた膵の炎症性変化が軽減していた.柴胡桂枝湯は単に疼痛を軽減しただけでなく,膵炎の治癒も促進したと考えられた.

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© 2009 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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