日本ペインクリニック学会誌
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症例
ミュンヒハウゼン症候群の1症例
境 徹也澄川 耕二
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電子付録

2010 年 17 巻 1 号 p. 21-24

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抄録

虚偽性障害は,身体的・心理的症状または徴候を意図的に作り出す疾患であり,特に身体的症状と徴候の優勢なものはミュンヒハウゼン症候群と呼ばれる.われわれは複合性局所疼痛症候群(CRPS)様症状をきたしたミュンヒハウゼン症候群患者を報告する.患者は47歳の男性であった.腰椎椎間板術後の腰下肢痛と歩行不能を訴え,車椅子で当科へ紹介受診となった.腰椎のMRIで,明らかな異常はなく,院外では普通に歩行していた.その後,咽喉頭部違和感,腹部不快感,上顎痛,発熱など多彩な身体症状を次から次へと訴えていたが,検査で異常はなかった.8カ月後に,右肘部管症候群に対する尺骨神経移行術後に,右腕の腫脹が出現し,CRPSが疑われた.13カ月後に,腹部不快感を訴え,腹部CTにて腸管内に金属異物が発見された.40カ月後に,右腕の腫脹が著明になり,右上腕がバンドで強く締め付けられているのが発見された.医療スタッフは早期にこの病態を認識し,この病的行動により混乱させられないことが重要である.

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© 2010 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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