日本ペインクリニック学会誌
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症例
診断が遅れたがん性髄膜炎の1症例
小原 洋昭田畑 麻里有島 英孝廣瀬 宗孝
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2012 年 19 巻 4 号 p. 512-515

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抄録

項部と両肩の痛みを主訴に紹介され,神経ブロックや内服治療にて一時的に症状の軽減がみられていたために,診断が遅れたがん性髄膜炎の1症例を報告する.54歳の女性で,乳がん術後8カ月目より項部から両肩にかけての痛みが出現し,外科にてMRI,CT検査を施行するも転移を疑わせる所見がないため当科紹介受診となった.初診時には項部と両肩に痛みがあったため後頭神経ブロック,トリガーポイント注射を施行したところ症状の軽減がみられ,また不眠もあったがチザニジン塩酸塩とロフラゼブ酸エチルの内服にて良眠が可能となっていた.しかしその3週間後より頭痛の増悪,耳鳴,複視が出現したため脳外科紹介となり,髄液検査にてがん性髄膜炎と診断された.がん性髄膜炎は画像診断にて指摘できなければその診断は髄液検査によってのみ確定されるが,どちらも検出率はさほど高くない.そのため症状が進行性で,治療に抵抗性の場合は悪性腫瘍の存在を念頭に置き,髄膜刺激症状の有無を入念に診察する必要がある.

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© 2012 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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