2013 年 20 巻 1 号 p. 32-35
【目的】咀嚼筋運動障害(開口制限)と三叉神経痛を合併しており,脳腫瘍が原因であることが判明した症例を経験したので報告する.【症例】症例は74歳の女性で,咀嚼筋運動障害(開口制限)を主訴に近医口腔外科を受診した.その際,開口時の右顎関節雑音を聴取すると同時に,右三叉神経第2枝領域に一致した違和感を訴えていたため,右顎関節症および右三叉神経痛(第2枝領域)と診断された.カルバマゼピンとチザニジン塩酸塩の内服加療が開始されたが,カルバマゼピンは副作用(ふらつき)の出現のため自己中断され,そのまま経過観察されていた.しかし,症状の改善がないため当科紹介となった.【治療経過】カルバマゼピン内服を自己中断した後は症状のコントロールが困難となっており,当科初診時よりプレガバリンの処方を開始した.プレガバリンで三叉神経痛は改善したが,咀嚼筋運動障害は改善しなかったため,頭部MRIを施行した.その結果,右錐体斜体部に腫瘤を認めたため,責任病巣と判断し脳神経外科へ紹介した.【結果】非典型症状を示す三叉神経痛症例では,症候性三叉神経痛を常に念頭に置き,時期を逃すことなくMRIの精査を考慮すべきである.