日本ペインクリニック学会誌
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症例
MMPIが介入方針の補助となった対照的な慢性痛の2症例
杉目 史行山内 正憲新谷 知久岩崎 創史山蔭 道明
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2014 年 21 巻 1 号 p. 40-44

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抄録

ミネソタ多面人格目録(MMPI)の施行が,慢性痛患者への介入方針を決める際に役立った2症例を報告する.症例1は70歳代,男性.腰部脊柱管狭窄症による腰痛と,6年前に受けた肺がん手術後の肋間神経痛の改善目的で紹介となった.臨床心理士の査定は“情緒的に不幸感や神経過敏で悩みやすい面と,ストレスに対して症状を悪化させやすい面が存在する”という評価であった.治療方針は情動面へのアプローチに重点をおいて,1カ月に1回の診察で症状の確認と傾聴,および母性的な対話,内服薬処方を行った.5カ月後,患者は痛みを受容し,リハビリに通い,車の運転が可能となった.症例2は60歳代,男性.4年前に右膝蓋骨骨折に対し骨接合術を受けたが,術後下肢痛が持続し当科紹介となった.MMPIの結果は“真面目で社会に同調し,他者と協調できる適応的なタイプ”という評価であった.治療方針は身体的な治療を優先し,脊髄刺激療法を行った.ADLの改善を認め仕事に復帰し,外来フォローとなった.MMPIが介入方針の補助となった対照的な慢性痛の2症例を経験した.MMPIは慢性痛患者に介入する適切な行動様式を判断する客観的な指標となりうる.

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© 2014 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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