日本ペインクリニック学会誌
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委員会報告
痛み診療の現場における2012年1年間の有害事象について—日本ペインクリニック学会安全委員会・有害事象調査報告と課題—
益田 律子斎藤 繁村川 和重宇野 武司比嘉 和夫田口 仁士津田 喬子横田 美幸田中 信彦
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2015 年 22 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

日本ペインクリニック学会安全委員会では,痛み診療における有害事象を調査して問題提起するとともに,情報を学会員間で共有するため有害事象収集事業を行っている.本稿では2012年の1年間を対象とした第2回調査(以下,第2回調査)結果について報告する.第2回調査では,第1回調査と同様に,日本ペインクリニック専門医指定研修施設307施設の代表専門医を対象として,施設内で発生した痛み診療の有害事象に関する後ろ向きアンケート調査を行った.回答は202施設(66%)から寄せられた.調査対象は鎮痛薬・鎮痛補助薬,神経ブロック・インターベンショナル治療,リハビリテーション,理学療法,医療機器,画像とした.2012年の有害事象は202施設中99施設で報告された.有害事象のほとんどが鎮痛薬・鎮痛補助薬の副作用,または神経ブロック・インターベンショナル治療の合併症であった.薬物に関しては,強オピオイドの不適切使用,高齢者における神経障害性痛治療薬の副作用,鎮痛薬使用中の自動車運転事故があげられた.抗血栓薬服用患者に対するブロック療法について日本における休薬指針の欠如が問題視された.神経ブロック・インターベンショナル治療に関しては,血腫と感染が重大合併症として報告された.このほか胸部のブロック後の気胸,超音波ガイド下末梢神経ブロック後の合併症が報告された.総じて,処方と施術の頻度が高いものほど有害事象報告件数が多かった.一部は発生に至る詳細な経緯が報告され,会員への警告および有害事象再発防止に有用と考えられた.

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© 2015 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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