日本ペインクリニック学会誌
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症例
肺がんによる難治性がん性痛に対してアルコールによる超音波ガイド下傍脊椎ブロックを施行した1症例
瀧澤 裕井上 莊一郎堀田 訓久五十嵐 孝丹波 嘉一郎
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2016 年 23 巻 4 号 p. 546-550

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抄録

肺がんによる難治性胸部痛に対し,オピオイド,放射線治療にアルコールを用いた超音波ガイド下胸部傍脊椎ブロック(US-TPVB)を併用し,良好な除痛効果が得られた症例を経験した.症例は右下葉肺がんの61歳,女性.原発巣の増大,右肋骨転移,胸膜播種に伴う右胸部痛を認めた.オピオイドの増量,肋間神経ブロック,間欠的硬膜外ブロックでは対処困難であったため,アルコールを用いたUS-TPVBを行い,いったんは鎮痛が得られた.しかし,痛みが悪化し,病巣の拡大が判明したため,放射線照射と1回目より尾側でのアルコールによるUS-TPVBを行った.以後6カ月間,痛みとオピオイド投与量は減少し,患者の活動性は改善した.TPVBは,体幹片側を除痛でき,術後鎮痛では硬膜外ブロックと鎮痛効果が同等で,合併症が少ないことが示されている.これらの特徴を考慮すると,神経破壊薬を用いたUS-TPVBは適切な症例を選べば,がん性痛治療の選択肢になると考えられる.進行肺がんによる難治性がん性痛に対し,アルコールによるUS-TPVBを併用することで良好な除痛効果が得られた.

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© 2016 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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