日本ペインクリニック学会誌
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症例
オピオイド鎮痛薬の減量に配慮を要した腕神経叢引き抜き損傷の2例
又吉 宏昭中西 俊之三宅 奈苗福田 志朗谷口 真
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2017 年 24 巻 2 号 p. 121-125

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抄録

オピオイド鎮痛薬 (以下オピオイド) を長期使用していた腕神経叢引き抜き損傷患者に対して,脊髄後根進入部破壊術 (DREZ-lesion) を施行したが,術後にオピオイドの減量に苦慮した2症例を経験した.症例1は44歳の男性.6年前に右腕神経叢引き抜き損傷を受傷.数年前から塩酸モルヒネを使用していた.DREZ-lesion後はフェンタニルの持続静注を用いてオピオイドを減量する計画であったが,術後1日目にオピオイドの退薬症状が出現した.症例2は43歳の男性.20年前に右腕神経叢引き抜き損傷を受傷.数年前からオピオイドが開始され,最近はフェンタニル貼付剤,トラマドールを使用していた.DREZ-lesion後は経口モルヒネ換算で20 mg/日ずつ減量し,退薬症状を起こすことなくオピオイドを中止できた.腕神経叢引き抜き損傷の痛みに対してDREZ-lesionは施行直後から痛みが消失することが多い.術前から長期間オピオイドを使用している非がん性痛患者で,手術により痛みの改善が見込まれる場合,術後もオピオイドを一定期間使用する必要があり,安全に減量・中止するには術前使用量の確実な把握と周術期の綿密な計画が重要である.

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© 2017 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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