2023 年 30 巻 4 号 p. 79-83
脊髄損傷後の難治性慢性疼痛に対して脊髄刺激療法は適応とされるものの,一般論として外傷性の脊髄損傷例に対しては,硬膜外腔の癒着もあるため,脊髄刺激療法自体の施行も難しく,また効果予測は非常に困難である.本報告の症例は交通事故による第12胸髄以下の不全麻痺と両下肢痛のため三環系抗うつ薬を内服していた.薬物治療は効果的であったが副作用による不整脈が出現したため,減薬を目的に脊髄刺激療法を導入した.三環形抗うつ薬の鎮痛機序は下降性抑制系の賦活であるため,脊髄刺激療法の選択においても下降性抑制系にも作用するとされるburst刺激を選択した.結果,良好な疼痛緩和が得られ,内服薬の減量が可能となり不整脈が消失した.本症例は脊髄不全損傷であり,後索機能の賦活化により本治療の効果を得た可能性がある.