2003 年 10 巻 4 号 p. 526-528
2年前より前胸部および肩甲部から腋窩に放散する痛みが続き, 他院神経内科でMRIによる検査も受けたが原因を特定できず難治性の疼痛として当科に紹介された. その治療中に片側の顔面および手掌の発汗減少と温感を訴えるようになりCT, MRIの検査を行い肺尖部肺癌が発見された. 本症例では臨床症状が定型的でなかったこと, ならびに肺尖部肺癌を念頭においた画像検査が行われなかったことが適切な治療が遅れた原因となった, また, 腫瘍の浸潤により生じる自律神経系の異常は自覚的, 他覚的所見の把握が困難であるため, 診察の際には自律神経活動の評価を必ず行うべきである.