2004 年 11 巻 1 号 p. 1-11
ヒトの脳内痛覚認知機構について, 脳波 (EEG) および脳磁図 (MEG) を用いたこれまでの研究を要約し, 今後の問題点について考察した. Aδ線維刺激による方法 (first pain 関連) では, レーザー光線刺激と表皮内の選択的電気刺激が主として用いられている. まず刺激対側半球の第1次体性感覚野 (SI) のおそらく1野と思われる部位に小さな反応がみられ, その後両側半球の第2次体性感覚野 (SII)-島にも反応がみられた. SI, SII, 島にほぼ同時に反応がみられることが痛覚認知の特徴的な所見である. 刺激同側半球の反応の潜時は対側半球よりも10~20ミリ秒長く, おそらく脳梁を介した反応と考えられる. これらの部位の反応は痛覚刺激時に自発運動を行わせることによって著明に抑制されるが, 特に刺激対側のSII-島の反応の変化がこの変化に重要であった. その後, 帯状回および扁桃体-海馬付近に反応がみられた. これらの部位の反応は注意や覚醒度の影響を強く受け, 情動に強く影響されると考えられた. 最近, C線維の選択的刺激 (second pain 関連) が可能となった. 結果はAδ線維刺激による場合とほぼ同様であったが, second pain 関連の反応は, 注意や覚醒度の影響をより強く受けることが明らかとなった.