日本ペインクリニック学会誌
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東京大学医学部附属病院におけるドラッグチャレンジテストの説明文書と同意文書
方法と偶発症について
水野 樹浅原 美保折井 亮矢島 直林田 眞和有田 英子花岡 一雄
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2006 年 13 巻 1 号 p. 13-17

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抄録

東京大学医学部附属病院では, 1997年より現在までに約100症例の慢性疼痛疾患に対する薬理学的疼痛機序判別試験 (ドラッグチャレンジテスト: DCT) を経験している. 2004年10月にはDCTの患者への説明文書と同意文書を改訂し, 現在も運用している. その記載内容は, 1) 患者の病名, 病態, 2) DCTの目的, 3) DCTの内容と性格および注意事項, 4) DCTに伴う危険性とその発生率, 偶発症発生時の対応, 5) 代替可能な検査法, 6) DCTを受けない場合に予想される経過, 7) 患者の具体的な希望, 質問と返答, 8) DCTの同意撤回の場合, 9) 連絡先, 10) DCTの同意文書, 11) 教育・学術研究への協力にっいての説明文書と同意文書, から構成されている. 当院ではこれまでに, 偶発症として, 薬疹, 頭痛, 悪心, 嘔吐, 腹部違和感, ふらつき, 転倒による打撲を数症例経験しているが, 後遺症の残るような重篤な症例は発生していない. 現行の説明文書には, 各テストの有効性, 陽性率が記載されておらず, 偶発症の発生率についても「可能性」という不確実な表現が用いられている. 今後は, 多施設で前向きに各テストの陽性率, 偶発症の発生率を調査し, 医学的根拠に基づいたより明確な情報を患者に提供する必要がある. しかし, 患者に各テスト薬物の作用や副作用, 各テストの合併症, 治療方針などを事前に説明することで先入感を与え, テストの結果やその後の治療に影響を及ぼす可能性から, DCTの信憑性に問題を生じることが危惧される. 各テスト薬物の特性や各テストの方法についての説明には注意を要する.

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