日本ペインクリニック学会誌
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鎖骨下法による金属絶縁針を用いた持続腕神経叢ブロック
坂本 浩堂崎 信一劔物 修
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1996 年 3 巻 1 号 p. 7-13

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抄録

目的: 上肢の長時間手術に対する麻酔には持続腕神経叢ブロックが有効である. 腕神経叢ブロックの穿刺法の1つである鎖骨下法には, 高位脊椎麻酔などの重篤な合併症がない. そこで, 長時間手術の麻酔と術後鎮痛のため鎖骨下法 (infraclavicular approach) による持続腕神経叢ブロックを施行した. 方法: 対象はASA分類1~2, 年齢4~59歳 (29.8±18.3平均±S.D.) の肩以外の上肢の手術を受ける患者20例, ターニケット使用は15例であった. 穿刺針の刺入点を, 成人では鎖骨の中点を通る鎖骨の垂線上の4~6cm外尾側とし, 神経刺激装置を用いて金属絶縁針を腋窩動脈の血管周囲鞘内に留置し局所麻酔薬を投与した. 結果: 全例で手術開始時には皮膚切開による血圧上昇などの浅麻酔兆候を認めなかった. 術中は局所麻酔薬の追加投与によって十分な麻酔深度を維持できた. 2例で血管周囲鞘探索時に動脈を穿刺した. しかし, 神経障害は認めなかった. 2例で初回の駆血カフ膨張により, 血圧が上昇した. 局所麻酔薬の追加投与により駆血カフ膨張前の血圧に戻ったので, ターニケットペインが疑われた. 結論: 重篤な合併症を起こさない鎖骨下法による持続腕神経叢ブロックは金属針でも安全に行なえ, 術中麻酔維持に有効で, 長期間の留置も可能と考えられた.

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© 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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