日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
Print ISSN : 1340-4903
ISSN-L : 1340-4903
脊髄硬膜外転移による癌性疼痛管理にくも膜下鎮痛法を用いた3症例-くも膜下鎮痛法の有効性とその限界
太田 孝一並木 昭義
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 3 巻 2 号 p. 97-101

詳細
抄録

骨転移腫瘍の脊髄神経への圧迫浸潤による腰下肢痛に対して, 通常のオピオイドなどによる疼痛管理が不十分な場合, 硬膜外鎮痛法が併用されるが, 腫瘍による硬膜外腔への圧迫により効果が得られなくなる症例がある. 今回, 硬膜外オピオイド鎮痛法による疼痛管理が無効になった症例で, くも膜下オピオイド鎮痛法に変更したところ, 良好な疼痛管理が可能となった3症例を経験した.
大腸癌 (2例), 胃癌 (1例) の骨盤内浸潤および骨転移による腰下肢痛にて, モルヒネ静注のほか, 放射線療法, ハロペリドール, ケタミン, カルバマゼピン, ステロイドなどの鎮痛補助薬による疼痛管理を試みたが, 十分な疼痛管理ができなかったため, 硬膜外オピオイド鎮痛法を併用した. 当初, 硬膜外オピオイド鎮痛法が有効であったが, 1~2カ月で無効になった. そこで, くも膜下オピオイド鎮痛法に変更したところ, 1例は死亡するまでの1カ月間, 良好な疼痛管理が行なえた. しかし, 残りの1例は, 髄膜炎のため, 11日目で, もう1例は5カ月目にくも膜下モルヒネによると思われるミオクロヌスとアロディニアによりくも膜下鎮痛法を断念せざるをえなかった. 終末期癌性疼痛管理における硬膜外およびくも膜下オピオイド鎮痛法の適応およびその限界について若干の考察を加え報告した.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
前の記事 次の記事
feedback
Top