日本ペインクリニック学会誌
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針による脊髄損傷下肢痛のケタミン持続点滴療法
清水 直子田上 正田尻 晃彦高群 博之笹岡 由香里寺崎 秀則
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1999 年 6 巻 1 号 p. 31-34

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抄録

硬膜外麻酔施行中の局所麻酔注射針による脊髄損傷下肢痛を, ケタミン持続点滴療法で改善できた. 症例は19歳, 女性. 急性虫垂炎手術の麻酔のため, 左側臥位にしてL 1-2間で傍正中法で硬膜外麻酔を行ない, 23ゲージ5cmの局麻針で局所麻酔中, 左下肢への放散痛を訴えた. 術後, 左側L5-S2領域に痛みを訴え, 同部位の知覚低下とアロディニアを認めた. アロディニアを生じたので, ニューロパシックペインを疑い, ケタミン持続点滴療法を行なった. これにより痛みの範囲, 程度ともに著明に改善した. また, 内服治療として, NMDA (N-methyl-D-aspartic acid) 受容体拮抗作用のあるデキストロメトルファンとアミトリプチリンを併用した. これらの治療により痛みは自制内となり, 日常生活の制限もなくなった.
脊髄損傷後早期のニューロパシックペインの治療にケタミン持続点滴療法は試みてよいと思われる. またケタミンと同様の作用をもつ薬剤の内服療法に変更し, 入院や外来通院をしなくてすんだことも, その後の好結果につながったものと思われる.

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