日本ペインクリニック学会誌
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硬膜外術後鎮痛
小坂 義弘
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1999 年 6 巻 2 号 p. 76-81

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抄録

大手術後には痛みのために呼吸が抑制されることがよく知られている. オピオイドはペインスコアーを低下させるが呼吸を抑制する. このとき硬膜外麻酔が用いられると呼吸機能を回復させ, 深呼吸や咳反射が可能になるので, 無気肺を予防し, 肺合併症を防止できる. しかし, 上腹部の術後鎮痛を硬膜外麻酔で行なう場合, 投与する局所麻酔薬の量が多くなれば血圧の低下は避けられない. 1979年にオピオイドが硬膜外鎮痛法に導入されたが、脊髄反射を抑制できず, 投与量が多いと中枢性の呼吸抑制を呈するので, 安全な術後鎮痛法ではなくなる. 今日では局所麻酔薬とオピオイドの相乗作用が期待されているので, 少量のオピオイドを低濃度の局所麻酔薬に混合させた併用投与が推奨されている. Preemptive analgesia (先制鎮痛) とは,「術後に中枢神経の過敏状態を生じさせないことを目的とした周術期の鎮痛」である. 近年, オピオイドレセプターのアゴニスト・アンタゴニストの研究が盛んになったが, 安全な鎮痛法の研究発展には重要な事項である。

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© 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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